平成30年度シンポジウムの報告

 12月15日(土)神戸親和女子大学三宮キャンパスにて,「スポーツによる兵庫・神戸の活性化: 国際スポーツイベントのインパクトとレガシー」と題して,シンポジウムが開催されました.

 

本シンポジウムは、平尾剛先生(神戸親和女子大学准教授)による基調講演から始まりました。平尾先生は、ご自身がラグビー経験者であり、神戸製鋼コベルコスティーラーズに所属しながら日本代表でプレイされた経験があります。プレイヤーとしての観点と現在ご専門として研究されている身体論の観点から、「私たちはなぜスポーツに感動するのか」について話されました。特に印象的だった点が、故・平尾誠二さんが「スポーツと芸術は似ているが、観客が座席から立ちあがりお尻が浮くのはスポーツだけだ」と語られていたことです。スタジアムの中で、プレイヤーと観客の間においてやり取りされている何かがあると強調されていました。また、ラグビーにはノーサイドの(戦い合った両チームの選手がどちらのサイドもなくなり、フェアープレーをたたえ合う)精神があるため、試合了後に両チームの選手・スタッフ・レフリー・その他関係者が一同に集い、軽食や飲物をとりながら交流を深めるアフターマッチファンクションというイベントがあります。現在では本来の意味が薄くなり、少しずつ形骸化されていることを危惧されていました。これに関連して、ラグビーでは大会期間中週1、2回しか試合がないため、選手やサポーターは、自由時間にまちを味わう雰囲気があるといいます。ゲームだけでなく、色々な観点から国際スポーツイベントは楽しむことができると述べられていました。 

続いて、シンポジウムが行われ、パネリストとしてメディアの視点から陳友昱氏(株式会社神戸新聞社編集局運動部部長)、行政の視点から長村博氏(神戸市市民参画推進局国際スポーツ室ラグビーワールドカップ事業推進担当課長)が登壇されました。陳氏は、今回の大会は他の国際スポーツイベントと比べてメディアの取材等が入りやすく、メディアに対して友好的であると述べられました。背景には、アジア地域でラグビーを普及させたい協会の思惑があり、メディアとの一種の約束があるといいます。また、神戸会場は三宮から近く(徒歩圏内)、どのような国際交流が生まれるのか、また来日するチームと地域でどのような交流活動がなされるのかについても注目したいと言われていました。長村氏は、大会の概要や御崎公園球技場(ノエビアスタジアム)の特徴に関してお話されました。ラグビー観戦に来る訪日外国人の特徴として、富裕層が多くビール好きも多いと予想されており、この層にどのようにアプローチしていくのか、また、ファンゾーンをメリケンパークでの開催を予定し、ステージイベントや様々なお店を出店することで盛り上げていくことを強調されました。さらに、「安全で円滑な大会運営を実現すること」、「全ての試合を満席にすること」、「神戸のまちの活性化につなぐこと」の3つを神戸開催における大会の成功として位置づけられました。 

最後に、2名のパネリストとコメンテーターの平尾先生を中心に、会場からの質問に対する回答や意見交換が行われました。そして、コーディネーターを務められた舩越達也先生(大阪国際大学准教授)よりラグビーの国際大会における今後の展望についての結びのお言葉がありました。

(神戸親和女子大学  高松 祥平 )

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