シンポジウム

令和2年度秋季シンポジウム 報告

 

  1025日(日)に兵庫県立大学神戸商科キャンパスにて、「ニューノーマル時代における新たな運動・スポーツ実践に向けて」と題して、秋季シンポジウムが開催されました。

 

本シンポジウムは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が運動・スポーツ活動の自粛や実践方法の見直しを図ることにまで及んだ昨今を顧み、新しい生活様式の中における運動・スポーツ実践の現状と方向性について、学校スポーツ関係者の立場から賀屋光晴先生(兵庫医療大学)、地域スポーツの関係者の立場から井原一久氏(NPO法人アスロン理事長)、民間スポーツ関係者の立場から佐藤博志氏(ゴールドジム神戸元町)の3名をパネリストに迎え、情報提供と質疑応答による活発な議論が繰り広げられました。

初めに登壇された賀屋先生からは、緊急事態宣言下でのオンラインによる実技の授業は毎回の動画配信によるミニ講義と小テストに加え、各自の体力や能力に応じて適切な運動強度の活動を見つけ、1日あたり10~13分程度の身体活動を1週間で合計90分実施することを課題として取り組んだことを話されました。学生のレポートの内容からは、自身の健康や身体への意識が前向きに変化したことが成果としてみられたとの報告がなされました。また、後期に入ってからは対面授業になったものの、受講人数を半分にした上で実技クラスとweb講義を交互に併用しながら実施していること、部活動は徐々に試合や競技会も再開しているものの、組合いを必要とする柔道等の種目によっては大会の開催に向けて慎重に議論が重ねられていることが説明されました。

次に登壇された井原氏からは、外出自粛を要請された4月以降は、地域の子どもたちのスポーツ実施の場として主に活動してきたジュニアスポーツクラブが休業に追い込まれたこと、一方で、朝食の提供や学習サポートを担ってきた子ども食堂の事業や、発達支援の必要な子どもたちにスポーツによる療育を提供してきた放課後等デイサービス事業は継続する必要があったことの現状を説明されました。休業期間中は、運動不足や不活発になる会員がいることを懸念し、オンラインビデオ会議システムのZoomを用いたレッスンの開講や検温・運動機器の消毒の徹底、職員の勤務形態の制度や顧客管理システムの導入等の業務内容の見直しなどを行い、事業の再開に向けて体制の変革を図ったことを話されました。業務を再開してからは屋外種目の会員の参加とキャンプ事業へのニーズはあるが、屋内で実施する体操については休会や退会が見られることも報告されました。

3人目の登壇者である佐藤氏は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で休業を余儀なくされた数多くの民間スポーツ施設の現状について、所属先のフィットネスジムを事例に説明されました。先述の井原氏の地域スポーツクラブ同様、新年度は新規会員の入会が見込まれる時期であるが、自粛要請により会員数の増加が認められなかったこと、業務再開後も既会員の利用の戻りに鈍さがあるが、(一社)日本フィットネス産業協会(FIA)のガイドラインに沿って感染予防や拡散防止の上でサービスの提供をしていることを話されました。今後はニューノーマル時代に向けて、安全・安心な環境を提供することに加え、健康的な生活習慣の獲得と高齢者のフレイルやサルコペニアの予防にも焦点を当て、新規会員の開拓と方向性の転換の必要性を強調されていました。

最後に、3名のパネリストの発表に対して会場からは、活動自粛によって大学の授業やスポーツクラブの運営にプラスに転じたことは何かといった問いや、ニューノーマルは今後ノーマルになっていくのか、また、これまで運動やスポーツ実践をしていなかった人たちが新たな実施者層になっている可能性があるのでは等の質問が投げかけられ、各パネリストの回答を得ながら会場との活発な意見交換が行われました。そして、コーディネーターを務められた伊藤克広先生(兵庫県立大学教授)より、ニューノーマル時代における新たな運動・スポーツ実践に向けて言及され締め括りとなりました。

今回のシンポジウムは、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を鑑みながらの開催となったため参加者は多くありませんでしたが、昨今の新型コロナウイルスが我々の活動に及ぼした影響と向き合い、今後いかに運動・スポーツ実践の推進に取り組んでいくべきかを考える機会となりました。国内外に及ぼした強烈なインパクトから生み出された様々な試みが実を結び、各々の運動・スポーツライフを豊かにしていくためのステップとなることを願って止みません。そして、運動やスポーツを行うことは決して特別なことではなく、新たな実施者となった人たちにとっても、日々の暮らしの中で「ノーマルなこと」になるといいなと感じました。

 

(湊川短期大学  谷めぐみ )

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2020年度 兵庫体育・スポーツ科学学会秋季シンポジウムのご案内

2020年度 兵庫体育・スポーツ科学学会秋季シンポジウム

 

テーマ:

「ニューノーマル時代における新たな運動・

スポーツ実践に向けて」

 

 新コロナウイルスの感染拡大という社会状況の中で、スポーツはこれまでの実践方法の見直しを迫られた。学校スポーツではオンライン,オンデマンドでの授業実施、各種競技大会が中止されることによる進学や就職への影響、地域スポーツではプログラムや教室の見直しや開催自粛、民間スポーツでは営業自粛など、各方面において非常に多くの影響が出た。その一方で、緊急事態宣言の自粛期間中にトレーニングやスポーツ実践の動画配信などが多数行われ、「スポーツの多様化」も見られた。これらはニューノーマル時代における新たな運動・スポーツ実践としてとらえられるであろう。

 本シンポジウムでは,「ニューノーマル(新しい生活様式)」に基づいて今後運動・スポーツは新コロナウイルスとどのように関わりながら実践して行く必要があるのか、その方向性についてディスカッションする。ニューノーマル時代における運動・スポーツ実践の方向性に関する知と情報の集積と蓄積を目指す。

 

日時・会場:

 

 

 20201025(日) 14:0016:00(受付13:30〜)

 兵庫県立大学 神戸商科キャンパス 教育棟Ⅱ 105教室

 参加方法・参加費:当日会場にて受付 無料

 

シンポジウム 14:1016:00

 

パネリスト:

学校スポーツ関係者の立場から:

賀屋 光晴(兵庫医療大学)

 

地域スポーツ関係者の立場から:

井原  一久NPO法人アスロン理事長)

 

民間スポーツ関係者の立場から:

佐藤 博志(ゴールドジム神戸元町)

 

コーディネーター:

谷 めぐみ(湊川短期大学),

伊藤 克広(兵庫県立大学)


 

会場アクセス:

 

角丸四角形吹き出し: 会場:教育棟Ⅱ 1階 105教室角丸四角形: 正門角丸四角形: 至 学園都市駅(神戸市営地下鉄西神・山手線)

 

 

主催:兵庫体育・スポーツ科学学会

 

 

注:会場へは公共交通機関をご利用ください。シンポジウム当日はマスクの着用、消毒等の新コロナウイルス感染予防へのご協力をお願いいたします。また、今後の新コロナウイルス感染状況によってはシンポジウム開催が延期および中止される場合があります。その場合は学会ホームページ(https://www.hspess.jp/)にてお知らせいたします。