平成29年度シンポジウムの報告

 平成29123日(日)に兵庫体育・スポーツ科学学会シンポジウムが、神戸女子大学三宮教育センターにて開催されました。テーマは「スポーツ栄養学の生かし方:食事 vs サプリメント」として、近年健康志向の高まりからサプリメント市場規模が年々伸長しており、本シンポジウムでは食事とサプリメントのあり方や摂取方法を、パネリストそれぞれの立場から情報交換を行いました。

 

【開会の挨拶】

高見彰(大阪国際大学人間科学部教授、兵庫体育・スポーツ科学学会会長)

 

【基調講演】

「スポーツ選手の食事の摂り方」

坂元美子(神戸女子大学健康福祉学部健康スポーツ栄養学科准教授)

 

【シンポジウム】

 

<パネリスト>

分子栄養学の立場から:小川静香(マルサンアイ株式会社開発統括部・研究開発室)

トレーナーの立場から:藤野絢也(ふじの整体研究所、イトマンスイミングスクール強化部トレーナ

人間栄養学の立場から:坂元美子(同上)

 

<コーディネーター>

伊藤克広(兵庫県立大学経済学部准教授)、山口志郎(流通科学大学人間社会学部准教授)

 

【総合ディスカッション】

 

【閉会の挨拶】

鵤木秀夫(兵庫県立大学経済学部教授、兵庫体育・スポーツ科学学会理事長)

 

【基調講演】

坂元美子(神戸女子大学健康福祉学部健康スポーツ栄養学科准教授)

 本基調講演では、スポーツ選手に求められる力の中で、バランスの良い食事を摂取することの重要性が述べられ、スポーツと5大栄養素の関係の説明がなされました。また、過去の研究結果から性別、競技種目によって目標とされるエネルギー摂取量は異なることが述べられました。坂元先生より、「ハードなトレーニング」、「無理な減量」による休養や栄養の不足により、様々なスポーツ障害のリスクが高まることが強調され、近年はサプリメントを摂取する学生やスポーツ選手が増えた現状が報告されました。しかしながら、サプリメントは過剰摂取してしまうと内蔵機能が正常に発達しなくなる可能性があることから、特に成長期のスポーツ選手はまずは食事から栄養バランスを整えることが重要と強調され、生理機能が落ちてくる30歳代から栄養バランスを考慮しながら適切に摂取するのはどうかといった提案がなされました。その後、サプリメントとドーピングの関連性の説明がなされ、最後にプロ野球選手の合宿時における朝食内容ならびに高校サッカー選手における食事の現状を写真と栄養摂取量の数値とともに情報提供がなされました。

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【パネルディスカッション】

小川静香(マルサンアイ株式会社開発統括部・研究開発室)

 小川先生からは、冒頭にマルサンアイ株式会社が製造している商品の説明や大豆、豆乳を中心とした製品が身体にどのような好影響を及ぼすかをご自身のトライアスロン経験とともに、具体的な数値データを基に説明がなされました。特に大豆食品は糖尿病や肥満、脂質代謝異常症などの生活習慣病などの様々なリスクファクターに対して改善効果を示すことが報告されており、マルサンアイでは様々な豆乳製品を製造し、消費者の健康を手助けする商品開発が行われていることが報告されました。現在は、分子栄養学の立場での研究にも携わっており、動物実験において女性アスリートや閉経後の女性に起こるエストロゲン(女性ホルモン)欠乏状態における筋萎縮の予防に豆乳摂取は効果があったことが報告されました。

 最後に、分子栄養学の進展とともに、今後は栄養素の分子レベルでの機能を明らかにすることの重要性が述べられ、また個々人の体質や遺伝子の違いを考慮したオーダーメイドの栄養学、そして商品開発が進むのではと今後の展望が述べられました。

 

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藤野絢也(ふじの整体研究所、イトマンスイミングスクール強化部トレーナ

 藤野先生からは、冒頭にご自身がこれまでトレーナーとして活動されてきた種目や対象者の説明がなされました。その後、現在ご自身が取り組まれているイトマンスイミングスクールでのトレーニング方法や栄養指導の現状、そして運動強度に応じた食事摂取の重要性が述べられました。競泳に必要な能力として、(1)体脂肪のコントロール、(2)筋量、筋力の増加、(3)持久力の向上、(4)日々のトレーニングに要するエネルギー、(5)ピーク時のエネルギー発揮、(6)疲労回復があり、こうした身体コントロールを行うためにも、栄養学の知識を基に選手たちに栄養指導をすることが重要と強調されました。選手によっては、間食を好む人も多く、そうした選手たちにどのように栄養指導を行うか、そういった苦労話も随所に報告がなされました。最後に、選手の運動強度や成長具合によって、求められる食事の量も異なることから、栄養学通りが全てベストではなく、個々人にあった運動、栄養指導が重要であり、その際サプリメントを適材適所摂取することも必要と結論づけられていました。

 

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【総合ディスカッション】

 3名のパネリストを中心に会場からの質問に対する回答や意見交換が行われました。会場からは、学校現場やリハビリテーション、子どもに対する栄養摂取の指導の仕方などに関する質問がなされ、活発な議論が展開されました。最後に、コーディネーターより、(1)栄養バランスは食事を通し摂取・調整を行うことが重要、(2)補えない栄養素をサプリメントでカバー、(3)年齢、性別、個々人に応じた栄養摂取が重要、と結論づけられました。

 

(文責:研究企画委員 伊藤克広・山口志郎)