平成27年度シンポジウムの報告

 平成27年度シンポジウムの報告

 

 平成2712 12日(土)に兵庫体育・スポーツ科学学会シンポジウムが、大原学園神戸校にて開催されました。テーマは「ジュニアアスリートの育成を考える〜タレント発掘育成事業からの情報発信〜」として、近年国内でも数多くの都道府県で実施されているジュニアアスリートの発掘育成事業に関する現場の情報交換を行いました。

 

【基調講演】

「ひょうごジュニアスポーツアカデミーについて〜発足から7年間を振り返る〜」

演者:平川和文(京都学園大学教授、神戸大学名誉教授、HJSA実行委員会委員長)

座長:鵤木秀夫(兵庫県立大学教授、HJSA実行委員会副委員長)

 

【パネルディスカッション】

コーディネーター:賀屋光晴(兵庫医療大学准教授)、長野崇(大原学園神戸校教員、神戸大学非常勤講師)

 

パネリスト

①三嶋公王((公財)福岡県スポーツ振興センタースポーツ振興課スポーツ主事

「福岡県タレント発掘事業から:「見つけて」「育て」「活かす」取り組みの成果と課題」

②安野秀樹(和歌山県教育庁生涯学習局スポーツ課指導主事)

「和歌山県ゴールデンキッズ発掘プロジェクトから:10年間を振り返って」

③板羽茂雄((公財)兵庫県体育協会事務局次長兼競技力向上課課長)

「兵庫県における競技力向上とジュニア育成について」

④矢野琢也(兵庫大学准教授、HJSA実行委員会副委員長)

「ひょうごジュニアスポーツアカデミーの育成プログラムについて」

 

「総合ディスカッション」

 

 

開会宣言 岡田会長

  

【基調講演】

平川和文(京都学園大学教授、神戸大学名誉教授、HJSA実行委員会委員長)

はじめに現在における日本でのTID(タレント発掘育成事業)の概要説明があり、その後、兵庫県におけるTID事業「ひょうごジュニアスポーツアカデミー:HJSA」の説明がありました。2008年から始まる発足の契機から7年間に渡る事業説明が詳細に行われました。HJSAでは、①身体能力開発育成プログラム、②知的プログラム、③競技体験プログラム、④保護者プログラムを軸に展開され、特に、兵庫県の取り組みの独自性やそこから得られた知見に関してもデータも含めて詳細に報告されました。

 今後に向けては、広報活動やパスウェー、予算、拠点の確保、学術的展開、専従スタッフの確保、プログラムの体系化等について提言されました。

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基調講演:平川先生

 

 

【パネルディスカッション】

①三嶋公王((公財)福岡県スポーツ振興センタースポーツ振興課スポーツ主事

「福岡県タレント発掘事業から:「見つけて」「育て」「活かす」取り組みの成果と課題」

 

 H16年に全国に先駆けてタレント発掘事業が開始された福岡県の取り組みを今日までの経緯ならびにそこで得られた成果を中心にお話し頂きました。特に実績として、国際大会出場者数28名(のべ102名)、全国大会優勝者数40名(のべ65名)や国体3年連続8位以内の成績に対して事業修了者の参加数が10%であった事の報告は、会場に感嘆と驚きが響き渡りました。また、教育委員会の全面的に協力のもと、4万人を超える応募数やその後の選考会の様子、合格後のプログラム概要が説明されました。三嶋氏のコメントから何度も出た「覚悟」という言葉は、選手の人生を左右しかねない重大な決断を行う事業における決意と信念、そしてそこに掛ける並々ならぬ情熱を表していました。

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②安野秀樹(和歌山県教育庁生涯学習局スポーツ課指導主事)

「和歌山県ゴールデンキッズ発掘プロジェクトから:10年間を振り返って」

 

 今年度の国体開催県として1つの節目を迎えた和歌山県のタレント発掘育成事業の取り組みを10年間の振り返りとその要因、そして今後の課題を中心にお話し頂きました。実績としては、国際大会出場者数6名、2015年国体出場者数23名、内13名が入賞という結果が報告され、福岡県に次いで実績が出されているタレント発掘育成事業の取り組み概要が報告されました。特にこれまでの取り組みから、修了生に関する問題点や課題、結果の出た修了生に関する要因の分析など、非常に興味深い内容が報告されました。また、和歌山県においても選手に対していかにトップアスリートを目指す「覚悟」を持たせられるかが重要であるというコメントが報告されました。

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③板羽茂雄((公財)兵庫県体育協会事務局次長兼競技力向上課課長)

「兵庫県における競技力向上とジュニア育成について」            

 

 (公財)兵庫県体育協会という公的な立場におけるジュニアアスリートの育成に関しての報告が詳細になされました。兵庫県が抱える競技力向上の課題として、「競技団体の基盤整備」「ジュニア、中学、高校、大学、競技団体との連携」「育成した選手の流出防止」「実業団などの選手の受け入れ先の不足」等が報告され、スポーツ兵庫の現状課題が示されました。一方、「指導者育成事業」「スポーツ指導者海外派遣補助事業」「スーパーアスリート養成事業」「リトライ・スポーツ・プロジェクト」などの今後に向けた取り組み事例も報告され、「ひょうごジュニアスポーツアカデミー」とあわせて継続的な競技力向上の取り組みが報告されました。

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④矢野琢也(兵庫大学准教授、HJSA実行委員会副委員長)

「ひょうごジュニアスポーツアカデミーの育成プログラムについて」

 

 HJSAがスタートして7年目にあたり、これまでの取り組み事例から、身体能力開発・育成プログラムに関して、得られた知見等を提言も含めて報告がありました。特に身体能力の測定に関して、その測定方法の変容から具体的な測定項目ならびにその結果を3年間の継続データを例に報告されました。その結果、性差や年代ごとの変化率の差、項目ごとの変化の差異など、これまであまり報告されていないこの年代のタレント発掘育成事業のデータが報告されました。さらに後半、鵤木秀夫(兵庫県立大学教授、HJSA実行委員会副委員長)より、選考会のデータから得られた知見が報告されました。HJSA選考会の選考方法に関して、相対的年齢効果(RAE)の影響が少なくない事やそれに対する対策事例としての試みが報告されました。

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【総合ディスカッション】

コーディネーター:賀屋光晴(兵庫医療大学准教授)、長野崇(大原学園神戸校教員、神戸大学非常勤講師)両名を中心に会場からの質問に対する回答や意見交換が行われました。会場からは、各取り組みの概算やスタッフに関する事、知的プログラムに関する事などが質問として出ました。その中でも、福岡県における出席率の高さや早期特化の競技種目に対する検討、和歌山県における中学生期の取り組みの重要性に関する提言は、タレント発掘育成事業の現場からの非常に貴重なコメントでした。

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(研究企画委員 矢野)