平成26年度シンポジウムの報告

 兵庫体育・スポーツ科学学会は、「阪神淡路大震災からの復興20年:スポーツが果たしてきた役割と可能性」をテーマとして、以下のプログラムにより、10月25日、神戸市・人をと防災未来センターにてシンポジウムを開催しました。

第1部:基調講演
 演 題:「阪神・淡路大震災からの復興20年」
 講演者: 清原 桂子(神戸学院大学現代社会学部教授)

第2部:シンポジウム
<パネリスト>
 桜井 誠一(一般社団法人日本身体障がい者水泳連盟常務理事、元神戸市広報課長)
 安達 貞至(元ヴィッセル神戸代表取締役社長、兼 ゼネラルマネージャー)
 吉岡 猛逸(元神戸新聞社運動部部長)
 山口 泰雄(神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授、兵庫体育・スポーツ科学学会顧問)
<司会・コーディネーター>
 長ヶ原 誠(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)
 小野 昌二(社会福祉法人学校法人イエス団)

第3部:防災セミナーツアー:人と防災未来センター

 基調講演では、清原桂子氏(元兵庫県阪神・淡路大震災復興本部総括部生活復興局長、同総括部長)により、阪神・淡路大震災の当時の状況を振り返ると共に、「今を生きがいをもって生きる」ことを支えるための場、仕組み、人材に関する具体的な支援事例、また、災害医療、被災者生活再建支援法、自治体間水平支援等の復興についての法的位置づけに関する取り組みや当時の課題を具体的にご紹介頂きました。住民が生きがいをもって今を生きるために、どのようなことが必要だったのかという生活復興の観点から、阪神・淡路大震災からの20年の全体経緯を知る貴重な情報と視座を与えて頂きました

 この基調講演をベースとして、スポーツに着目した復興支援をテーマとしたシンポジウムが開会し、震災当時は元神戸市広報課長を務められていた櫻井誠氏により、行政施策のご経験から、子どもを対象としたスポーツとその場の確保の課題、また生活再建とは何かと草の根ワークショップの事例等を紹介して頂きながら、ハード面のみではなく「つながり」「身体とこころ」の回復の重要性と、日常行っているスポーツや文化的なものがいち早く回復することが、積極的な復興・生活再建に繋がったことが報告されました。また、障がいを負った人による、その障がいを受容し、再び社会で活躍するために行う総合的なリハビリプログラムが、震災復興と同じコンセプトであることを指摘され、リハビリからスポーツへの流れとして、パラリンピックの可能性についても言及されました。

 次のパネリストとして震災当時、ヴィッセル神戸の強化部長を務められていた安達貞至氏により、当チームが震災の当日の午前9時、練習を開始してスタートする予定であったこと、阪神・淡路大震災と共に誕生し歩んできた当時の状況と経緯に触れながら、震災とメイン株主の撤退という二重苦の中、「サッカーを通じて市民に元気を与えてほしい」と神戸市の全面的なサポートのお陰でサッカーを通じて避難先の子供達に元気を与えることができ、市民との絆が深まった当時の模様をチーム内の状況と共にご紹介頂きました。その後、見事にJリーグ昇格を果たせたのは、市民と選手、スタジアムが一体となり大きな力が発揮できた証であり、プロスポーツと震災復興の関わりの中でスポーツの力を伝えて頂きました。

 3人目のパネリストとして、震災当時に神戸新聞社運動部部長であった吉岡猛逸氏より、当時、兵庫県内における各種スポーツ大会の中止をはじめとするスポーツの機会が奪われたことにより、新聞掲載のためのスポーツ関係情報が全くなかった状況について、当時の現物の新聞と共に紹介されました。その逆境を乗り越え、1月末の福島国体スケート競技会への県選手団派遣、選抜高校野球大会の実施、プロ野球オープン戦の神戸開催等、その後のスポーツの復興の中に、「こんな時だからこそスポーツを」という当時の人々の想いと、震災で日々の暮らしが一変した中、スポーツが日常性を取り戻し、元気を出すきっかけになるという期待感がこれまでの復興を支えてきたことを強調され、震災復興の中で果たしてきたスポーツの「力」を指摘されました。

 最後のパネリストである山口泰雄氏からは、被災地域における子どものスポーツや遊び空間の減少、学校における体育の授業や部活動の制限、遊び空間の減少とスポーツ活動の制限による肥満児の増加、小中学校教師たちによる授業内容やカリキュラムの見直し、子どもたちによる新しい遊びやゲームの考案等、その当時の課題と各種取組、また全国・海外からの支援に対する「感謝と友情」を理念にした「第1回神戸マラソン」を始動した背景を通じて復興支援におけるスポーツの役割と意義をご紹介頂きました。また、様々なレベルにおけるスポーツの価値と社会的効果に関する学術的情報の紹介と共に、スポーツのもつ「力」の可能性と今後の課題について統括して頂きました。

 この後のフロアからの質問と各パネリストからのコメントも含め、全体を通じて各演者による豊富な情報提供と、各自のこれまでの復興支援に対する想いが溢れる会となり、阪神・淡路大震災復興の中でスポーツが果たしてきた様々な歴史的背景と共に、復興支援としてスポーツのもつ「力」と今後の可能性を共有することのできた記念すべきシンポジウムとなりました。(研究企画委員会)